第1種貨物利用運送事業について
貨物利用運送事業について
貨物利用運送事業の仕事とは
「貨物利用運送事業」と呼ばれる運送業をご存じですか?
運送業と言えば一般的に「荷主から料金をもらって自社のトラックで荷物を運送をする」というイメージがあるのではないでしょうか。これを一般貨物自動車運送事業といいますが、運送業にはその他にも利用運送「貨物利用運送事業」と呼ばれる運送業があり、利用運送であれば、すでに運送事業の許可を取得している実運送業者を利用して、トラック・車庫・ドライバーや運行管理者等を用意せずに、契約を結んだ運送業者に配車を依頼することで運送することができます。
ですので、一般貨物自動車運送事業を始めるとなるとトラックをしたり、車庫を用意したり、運行管理者等の人材を用意したりと事業を始める上で非常に難易度が高いと感じると思いますが(実際に一般貨物は許可が必要な事業の中でも非常に取得の難しい許可です)、利用運送は自ら運送の仕事を取ってきて、実際の運送は運送業者(一般貨物運送事業者)を利用する仕事ですから比較的参入しやすい運送事業です。
【例】
自社倉庫で荷物の保管をしている会社が取引先等から配送もやってくれないかと言われていたが、トラックやドライバー等の人材もいないため配車依頼を断っていた。そこで利用運送事業を始めることによって、自社でトラックを保有せずとも取引先や関連会社からの配車依頼を受託できるようになった。
また、利用をする事業者はトラックだけとは限らず船、飛行機、鉄道などさまざまです。
貨物利用運送事業法 (定義) 第二条 この法律において「実運送」とは、船舶運航事業者、航空運送事業者、鉄道運送事業者又は貨物自動車運送事業者(以下「実運送事業者」という。)の行う貨物の運送をいい、「利用運送」とは、運送事業者の行う運送(実運送に係るものに限る。)を利用してする貨物の運送をいう。
※ちなみに実運送業者を利用した運送業の場合の運送責任は貨物利用運送業者が責任を持つことになります。国土交通省の資料がありますのでご確認ください。
貨物利用運送事業の種類
ここでは第1種貨物利用運送事業を取り上げていますが、貨物利用運送は第1種と第2種があります。
貨物運送事業法 (定義) 第二条 6 この法律において「貨物利用運送事業」とは、第一種貨物利用運送事業及び第二種貨物利用運送事業をいう。
第2種との違いはこちらで取り上げませんが詳しくはは国土交通省のQ&Aをご参考にご覧ください。
第1種貨物利用運送事業の登録要件(許可要件)
では、次に利用運送の事業をするにはどんな要件をクリアして登録申請をしなければいけないのかを確認していきます。
【営業所】
貨物利用運送事業を営むための営業事務所が必要です。
一般貨物自動車運送事業と同様に使用権原の有している事と都市計画法等関係法令に抵触しないことが必要です。
従って、市街化調整区域で第一種貨物利用運送事業を営むことはできません。
また、必要面積については特段定められていないので、利用運送業務が常識的に行える広さが確保されていれば問題ありません。
※保管施設を要する場合には上記の他にの保管施設の規模、構造及び設備が適切なものであることが求められています。
【財産的要件】
国土交通省が定める基準として300万円以上の純資産であることが求められています。
貨物利用運送事業法施工規則 (財産的基礎) 第七条 法第六条第一項第七号の国土交通省令で定める基準は、次条に定めるところにより算定した資産額(以下「基準資産額」という。)が三百万円以上であることとする。
これは貸借対照表等で証明しますが、あくまで純資産が300万円以上となりますので、預金残高や資本金ではありませんので注意が必要です。
【人的要件】
利用運送事業法では欠格事項が定められていますが、上記の施設や財産基礎要件以外に人的要件があります。
①一年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
②第一種貨物利用運送事業の登録又は第二種貨物利用運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から二年を経過しない者
③申請前二年以内に貨物利用運送事業に関し不正な行為をした者
④法人であって、その役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。以下同じ。)のうちに前三号のいずれかに該当する者のあるもの
⑤船舶運航事業者若しくは航空運送事業者が本邦と外国との間において行う貨物の運送(以下「国際貨物運送」という。)又は航空運送事業者が行う本邦内の各地間において発着する貨物の運送(以下「国内貨物運送」という。)に係る第一種貨物利用運送事業を経営しようとする者であって、
次に掲げる者に該当するもの
イ 日本国籍を有しない者
ロ 外国又は外国の公共団体若しくはこれに準ずるものハ 外国の法令に基づいて設立された法人その他の団体
ニ 法人であって、イからハまでに掲げる者がその代表者であるもの又はこれらの者がその役員の三分の一以上若しくは議決権の三分の一以上を占めるもの
欠格要件に該当するか否かはよく確認しましょう。
申請に必要な書類
次に申請に必要な書類を見ていきましょう。
第一種貨物利用運送事業の申請書類は利用運送事業法施工規則にて定められています。
申請書類
- 第一種貨物利用運送事業登録申請書
- 事業計画書
- 貨物利用運送事業者と運送事業者との運送に関する契約書
- 貨物利用運送事業用施設に関する書類
(営業所および貨物の保管体制を必要とする場合にあっては保管施設に関する書類) - 施設の案内図、見取図、平面図
- 都市計画法関係法令に抵触しないことの書面(宣誓書)
- 施設の使用権原を証する書面(宣誓書)
※ココから申請者によって分かれます。
申請書類【設立済み法人の場合】
- 定款または寄付行為および登記簿謄本
※事業目的に「貨物利用運送事業」の記載が必要ですので確認しましょう。 - 最近の事業年度における貸借対照表
- 役員または社員の名簿および履歴書
申請書類【設立予定の法人の場合】
- 定款または寄付行為の謄本
※事業目的に「貨物利用運送事業」の記載が必要です。 - 発起人、社員または設立者の名簿および履歴書
- 設立しようとする法人の株式の引受けを記載した書面
- 開始貸借対照表
申請書類【個人事業主の場合】
- 財産に関する調書
- 戸籍抄本
- 履歴書
- 法第6条第1項第1号から第5号までのいずれにも該当しない旨を称する書類(宣誓書)
保管施設を使用する場合には下記の書類も提出する必要があります。
- 貨物保管施設の面積、構造及び附属設備を記載した書類
- 保管施設の使用権原を証する書面(宣誓書)
許可が下りるまでの期間
標準処理期間は申請してから約2~3カ月間と定められています。
第一種貨物利用運送事業の登録後
【登録免許税の納付】
登録後に事務所(営業所)の所在地を管轄する運輸支局から「登録免許税納付通知書」が送付されてきますので、登録日から1ヶ月以内に登録免許税として9万円を納付する必要があります。
【運賃料金設定届出書の提出】
運賃・料金を設定したら管轄する運輸支局に「運賃料金設定届出書」を提出する必要があります。
【事業報告書と事業実績報告書】
登録後は毎年の定期報告として
・事業報告書
毎事業年度に係る事業報告書を、毎事業年度の経過後100日以内に管轄の運輸支局に提出しなければなりません。
・事業実績報告書
前年4月1日から3月31日までの期間に係る事業実績報告書を、毎年7月10日までに管轄の運輸支局に提出しなければなりません。
【登録後の変更手続き】
登録した内容に変更がある場合には手続きにが必要です。
手続きが主な必要事項は下記をご確認ください。
- 主たる事務所の名称又は位置の変更
- その他の営業所の名称及び位置の変更
- 利用運送の区域又は区間の変更
- 業務の範囲の変更
- 貨物の保管施設の変更
- 利用する運送を行う実運送事業者又は利用運送事業者の変更
ほかに事業の譲渡譲受、合併及び分割、相続、事業の廃止も手続きにが必要になります。
【おわりに】
利用運送事業にも種類があり、第1種貨物利用運送事業の登録要件や必要書類等について確認ができましたか?
また、登録後も事業報告書等の事業者が行わなければいけないことがあります。一般貨物自動車運送事業に比べてハードルは低いといってもやる事はたくさんあります。
すべて事業者自らがやることもできますが多くの時間や労力を割くことになります。
そんな時には当事務所にぜひご相談ください。
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